【看護師インタビュー】認知症ケアチームの取り組み ―患者さんが安心して療養できる環境を!
世界一高齢化が進む日本では、2025年現在、3人に1人が65歳以上となりました。そしてその65歳以上の高齢者のうち7人に1人が認知症という統計が出ています。高齢者医療において認知症は避けて通れない課題の一つとなっています。桜十字八代リハビリテーション病院では、「認知症サポートチーム」が活動中。このチームでは、認知症の患者さんに対して、どのようなサポートを行っているのでしょうか。

インタビューに答えてくれた人
障害者施設等一般病棟 主任看護師 黒澤 昭生 さん
インタビュー実施
2025年10月
–認知症サポートチームについて教えてください。
黒澤昭生さん(以下、黒澤) 認知症やせん妄の症状を持つ患者に対して、専門的な知識を持った医師、看護師、薬剤師、リハビリスタッフ、事務スタッフ等が連携し、認知症サポートチームを編成しています。このチームでは、定期的に回診や事例検討、カンファレンスを行い、患者さんが安心して治療を受けられる環境作りに取り組んでいます。
–具体的には、どのようなサポートを行っているのでしょうか?
黒澤 私たち認知症サポートチームの活動の中心は、大きく分けて2つあります。1つは身体抑制の最小化委員会の運営です。月に1回、担当医をはじめ、看護師、リハビリ職など多職種が集まり、抑制の必要性や対応方針について話し合っています。もう1つは、精神科医のラウンドです。月1回、精神科の先生に来ていただき、対象となる患者さんについて診察や助言を受けています。薬剤の調整や看護対応への具体的なアドバイスをもらいながら、治療とケアの両面で支援しています。それ以外にも、病棟のスタッフから「困りごと」が共有されたときに一緒に対応を考えたり、職員向けの認知症ケア研修を行ったりしています。
–どのような「困りごと」が挙がるのですか?
黒澤 よくあるのは、「入院しているという状況を認識できず、夜になると帰ろうとされる患者さん」のケースです。ご本人は強い不安を感じているため、まずはその思いをしっかり受け止め、どんな対応が適切かをチームで考えます。医師からは薬の調整、看護師からは夜間の安心感を高める対応策など、さまざまな角度から検討します。また、骨折後の治療中に「歩けるから大丈夫」と自己判断してしまい、転倒リスクが高いケースもあります。こうした場合は、やむを得ず抑制を検討することもありますが、「本当に必要か」「代替手段はないか」を丁寧に話し合っています。
–カンファレンスではどのようなことが話し合われるのでしょうか?
黒澤 抑制に関するカンファレンスは毎日行っています。「今の抑制が本当に必要か」「解除できるタイミングはないか」「抑制以外の方法で安全を守れないか」といった点をスタッフ全員で確認しています。解除可能であれば、部分的な解除や時間を区切った対応など柔軟な方法も検討します。また、認知症患者さんの事例検討も月2例程度行っています。患者さんが感じている困りごとに対し、どうすれば少しでも希望に寄り添えるか、ケアの方法を具体的に検討しています。
–認知症ケアチームの目標を教えてください
黒澤 私たちの大きな目標は、可能な限り身体抑制をゼロに近づけることです。チーム発足当初と比べると、抑制率はかなり減少してきています。もちろん、安全を担保することは大前提です。そのうえで、できる限り抑制に頼らず安心して過ごしていただける環境を目指しています。
もう一つの柱としてはスタッフ教育があります。認知症ケアの知識が深まらないと、現場でどう対応していいかわからない場面も多いです。スタッフ一人ひとりが患者さんの尊厳や権利を尊重し、適切に関わることができるよう、研修や勉強会にも力を入れています。
–認知症ケアチームのやりがいを教えてください。
黒澤 認知症の症状や進行度、生活背景は患者それぞれ異なっており、マニュアル通りでない「その人らしさ」を尊重したケアが求められます。そのため、個別性の高いケアに挑戦できるのが難しさであり魅力でもあります。上手く対応できたときや、「ありがとう」と言われた時の満足感は大きいと思います。
ある患者さんが「家に帰りたい」と強く訴えられたときのことです。私たちだけでは対応が難しかったので、ご家族にも協力をお願いして電話で話していただいたんです。普段は表情が険しい方だったのですが、そのときは少し柔らかい表情になり、「あなたに頼んでよかった」と言ってくださいました。ご希望をすべて叶えることはできなくても、「少しでも思いに寄り添うこと」はできる。そう感じた印象深いできごとでした。チームや周囲のスタッフが連携しているからこそ実現できた対応だったと思っています。
–これからの展望を教えてください。
黒澤 認知症ケアチーム発足時には約40%もあった身体抑制実施率が、現在では12%まで減少しました。車椅子安全ベルトがゼロになった病棟もあり、ベッド4点柵以外の抑制がゼロ件の月も見られるようになりました。今後も身体抑制数の減少に取り組んでいき、患者の尊厳の保持に努め、不要な抑制を行わず、患者さんの離床拡大を促してADL改善につなげていきたいですね。
